オリゴガラクツロナイドによる刺激に呼応してニンジン培養細胞内に誘導される二次代謝活性の発現にGTP結合タンパク質が寄与する可能性について検討した。Gタンパク活性化剤であるGTP-γ-Sやmastoparanでニンジン細胞を処理した場合は、オリゴウロナイドが存在しない場合においても二次代謝能の発現が見られた。一方、GDP-β-Sやsuramin等のGタンパク阻害剤で細胞を前処理した後にオリゴウロナイド刺激を与えた場合には代謝能の発現が抑制されることが示された。次いで、水系二層分配法によってニンジン培養細胞から原形質膜を精製し、これにオリゴウロナイド刺激を加えた際の膜局在性GTPase活性の変化を[^<33>P]GTPを基質として検討した。その結果、ウロナイド添加した細胞においては無処理のコントロールと比較して加水分解活性の顕著な上昇がみられ、NaF存在下ではこれがほぼ完全に抑制された。これより、ウロナイド刺激によって原形質膜内のGTP特異的な加水分解酵素の活性が上昇していることが示された。更に、様々な条件下でニンジン原形質膜標品と[^<35>S]GTP-γ-Sとをインキュベートし膜局在性のGTP結合能を比較したころ、オリゴウロナイド存在下で著しい結合活性の上昇が認められた。この活性は非放射性のGTP添加でのみ大きく低下し、ATP添加ではほとんど影響を受けなかったことから、GTP特異的な結合能であると推察される。以上の結果を総合すると、オリゴガラクロナイドによるニンジン培養細胞の二次代謝誘導の発現誘導には、その初期過程においてGTP結合タンパク質が大きな役割を果たしているものと考えられる。
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