研究課題/領域番号 |
11877398
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
熊谷 嘉人 筑波大学, 社会医学系, 助教授 (00250100)
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研究分担者 |
宮内 卓 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (60222329)
下條 信弘 筑波大学, 社会医学系, 教授 (00080622)
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キーワード | キノン系化合物 / 一酸化窒素 / 環境化学物質 / 循環器疾患 / 血管調節 |
研究概要 |
1)フェナントラキノンの血管内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)活性に対するIC_<50>値は0.55μMであり、神経型NOS(nNOS)に対する阻害度より18倍高かった。2)フェナントラキノン以外のキノン系化合物もeNOS活性を阻害し、その阻害強度はそれぞれのキノン系化合物が有する1電子還元ポテンシャル値に相関した。3)フェナントラキノンのeNOS阻害様式はアルギニンに対して非拮抗型であったが、NADPHに対して拮抗型を示した。4)アセチルコリンによる内皮依存性の血管弛緩反応は、フェナントラキノン(5μM)により有意(P<0.05)に抑制されたが、ニトログリセリンによる内皮非依存性の血管弛緩反応は影響を受けなかった。5)フェナントラキノンをラットに腹腔内投与(0.36mmol/kg)とすると、平均血圧は有意に増加した(平均血圧の上昇値:33±6mmHg、P<0.01)。同様な条件下、plasma中のNO代謝物であるNO_2^-/NO_3^-量は無処置群の68%(P<0.01)まで低下していた。 以上の結果より、フェナントラキノンをはじめとするキノン系化合物は、nNOSのみならずeNOSに対して強い阻害効果を示すことが明らかとなった。阻害強度と1電子還元ポテンシャル値との関係ならびに速度論的解析の結果より、フェナントラキノンの阻害様式は既に明らかにされているnNOSの場合と同様なメカニズムによることが示唆された。フェナントラキノン曝露により観察された血管平滑筋の弛緩低下ならびに血圧上昇の原因は、eNOS活性阻害に起因する定常レベルのNO産生量の低下によることが考えられた。 備考:上記した研究結果をまとめて、American Journal of Physiologyに投稿中。
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