循環器臨床の教育のために必要な新しい教材の作成を進めている。これからの学部学生の教育に求められることは、まず問題探求と問題解決能力の養成にあると考えられる。また循環器の臨床においては、心エコー、心血管撮影などを中心とした動画像の情報や、聴診で得られる音声情報、他のレントゲンやCTなどの画像情報が特に重要である。循環器疾患の救急診療においては、病歴と身体所見に加えて、これらの情報を駆使し、刻々と変化する状況を踏まえつつ、問題の把握を把握して検査計画と治療計画を立てることが求められる。これらの教育を可能とするために、新たな教材の作成をはじめた。今年度は少数例の雛型を作り、学生教育に供しながら、その効果について検討を加えた。病例は房室ブロックで発症した胸痛の女性で、救急処置を行いながら、胸部レントゲン、心電図、心エコーを見ながら次に行うべき検査等を考え、ついに心サルコイドーシスという疾患の診断を行い、治療計画を考えるというシナリオである。すでに10グループでの施行の結果、学生の問題探求および問題解決にいたるプロセスを考えるにはふさわしい方法であることが明らかになったと考える。次のステップとして現在典型的循環器疾患病例約160例の生データを収集を終えた段階である。また上記症例のように検査診断の思考過程が重要な約20の救急的な循環器疾患について、そのシナリオを作成中である。その一部は学生教育の場で使用して教材としての適否を確認している。今後は収集したデータのデジタル化とパソコンファイルへの収載、シナリオと画像データをあわせて仮想臨床空間を作り出し、自習も可能な教材としてまとめあげていく予定である。これまでの成果の一部は平成12年度の日本医学教育学会(仙台)で発表の予定である。
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