【背景と目的】循環器臨床の教育のために必要な新しい教材の作成を進めた。これからの学部学生の教育に求められることは、まず問題探求と問題解決能力の養成にあると考えられる。また循環器の臨床においては、動画像の情報や、聴診で得られる音声情報、他のレントゲンやCTなどの画像情報が特に重要である。【方法】これらの教育を可能とするために、パソコン、デジタル聴診器、プロジェクター、スピーカー、ビデオデッキを組み込んだ可搬型の教育機材を作成、また症例ごとに心音、X線、心エコー、血管造影をデジタル化して取り込み教材を作成した。症例の症候と基礎的な血液検査結果、心電図はあらかじめ学生に配布して、予習に供した。診断上必要な心音、動画像、静止画像は順次実物を供覧して、参加学生に判読を求めた。テュータは全過程を通じて援助を行うのみで、最後にまとめを行った。【結果】年間に13回の検討会を行った。鑑別診断や画像判読については議論が盛り上がった。学生からは、症例ごとに心音や心エコー、アンギオなどの視聴覚の実情報を見ながら判読を行う点でインパクトが高く、学習意欲が増す、また計画立案の要点が理解できたとの点で高い評価を得た。【結論】1年間の施行の結果、この方法は、短時間で、計画立案能力と検査所見判読の訓練・評価ができる点で有用であり、学生の問題探求および問題解決にいたるプロセスを考えるにはふさわしい方法であることが明らかになった。次のステップとしてデータのデジタル化とパソコンファイルへの収載、シナリオと画像データをあわせて仮想臨床空間を作り出し、自習も可能な教材としてまとめあげていく予定である。これまでの成果の一部は平成12年度の日本医学教育学会(仙台)で発表した。
|