研究概要 |
より生活に密着したリハビリテーションが求められる現在,生活を十分に観察し,解釈したうえで,介入できる力が求められている。作業療法学生が,授業において習得する発達や障害に関する科学的知識を,子どもの多様な日常生活へと結ぶ観察法や介入の糸口を見い出すための方法論の提示が重要である。子どもの日常活動についてのエスノグラフィックなデータは少ない。そこで,子どもの日常生活の自然な姿をそのままとらえる教材作成が必要と考えられた。 今年度は子どもの食事活動におけるビデオデータ分析方法の確定と教材のひな形を作成できた。以下に保育園の3才健常児と障害児通園施設の4才障害児の例をとって示す。第1に,パソコン上シートの縦に1秒間に1行の欄を設定した。健常児は1434行,障害児1268行であった。横軸に対象児の行為,周囲の職員仲間との交流をとった。対象児の行為変化,また言葉が終った時に,縦軸に時間を記入し,横軸に内容を記述した。健常児は442個,障害児は514個のデータが得られた。第2に,全データを小エピソードごとに要約した。健常児,障害児とも54個であった。これにより,子どもの活動の全体文脈を得た。第3に,これに基づき,分析を行った。その結果,単独行為は,ともに技能に関する記述が中心であった。一方,相互交流では,指導や介助が中心であった。エピソードの開始と終了に基づきビデオデータを作成した。 障害児,健常児とも食器を扱う技能はともに未熟であった。しかし,それが食事の際に大きな問題とはならない。すなわち,食物対象により他の部位を使ったり,やりかたを変えることで解決していた。子どもの実際の生活は子どもなりの合理性をもったものであった。このような子どもの生活上の合理性の実際にそってプログラムを作成することの重要性が示唆された。
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