今年度は、臨床看護婦自身が認識し、実践している内容を半構成的面接法を用い、探っていった。対象者は、臨床看護経験5年以上、管理職者から良い看護ケアを行っていると推薦が得られた看護婦20名で、質問内容は、看護の専門性・独自性とはどんな看護実践と考えるかというものであった。看護婦達が述べた内容の多くは、「患者の日常生活援助は看護判断で行っていく。」「患者が本当に求めている看護援助を行う。」「患者を全人的に捉えていく。」「患者との信頼関係を築く。」等、患者に対してのものであった。また、「患者が最適な医療を受けられるよう調整していく。」「患者と医師との間がうまくいくための潤滑油。」など他職種に対する行動、「キャリアを積み続けていく。」「知識や技術を身につけていく。」「常に、専門的な教育プログラムで研修を受けていく。」など、自分自身に対するものも抽出された。これらの内容は、志自岐の研究報告と類似したものであったが、専門職者として患者に対する責任をどこまで引き受けるか、ジレンマを感じた時にどのような行動をとるか等、専門職的自律性を大きく問われる内容はあまり述べられなかった。Schutzenhoferが開発したNursing Activity Scaleを使用した我々の研究でも、医師との間で葛藤が生じた時、医療訴訟時の責任のとり方等は、低い得点結果が得られており、これらの内容に対する看護婦達の考え、行動を更に調査する必要があると考えられた。特に、医師との関係においては、自己の考えを主張する前に、医師と相談し、調整していく等、医療チームの中での「調和」「協調」を大切にしており、また、患者との関係においても、患者一看護婦以前に、人間としての信頼関係を大切にするという特徴があることがわかった。
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