今年度は、看護婦の専門職的自律性について、SchutzenhoferによるNursing Activity Scaleを用いた質問紙調査を実施し、アメリカにおける結果と比較分析を行った。この結果、日本の看護婦637名の回答は、年齢、臨床経験年数、基礎教育背景、職位、専門職団体への加入等の属性と自律性の関係において、アメリカでのSchutzenhoferの調査結果に一致していた。しかし、看護体制の違いでは、自律性をもっとも必要足されているブライマリーナーシングを行っている看護婦が、アメリカの調査と同じように高い自律性を示したが、他の看護体制との統計的有意差は示されなかった。さらに、医療訴訟、職務に対する責任の認識と専門職的自律性との関連がアメリカに比べて低いことが明らかになった。 上記の調査にあわせて、CINAHL、MEDLINE、医学中央雑誌のデーターベースによる文献検索を行い、専門職的自律性の日米間における理論的背景の違いを明らかにした。アメリカでは70年代から患者の人権擁護への関心が高まり、看護婦の自律性についての研究が盛んとなった。日本においても1980年代半ばから自律性の研究は盛んに行われてきたが、文献検索の結果では研究数は非常に少ない現状にあった。自律性は非常に抽象的な概念であるため、倫理学、フェミニズム、キャリア発達の理論等を背景とした多くの定義、研究テーマが存在していた。特に、日本では専門職としての自律性と主体性という概念が混同されて研究が続けられており、日本における自律性の概念分析と日本の法制度と看護婦の自律性の関係を明確にする必要性が生じた。
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