本研究は、看護臨地実習を行う学生の実習体験の意味を理解し、彼らに内在する自己組織力を助成する教育介入を創出することにあり、今年度の研究の問いは、(1)学生を全体性として捉え直してみると、その看護臨地実習体験はどのようなプロセスを辿るのか。(2)学生のもつダイナミックで予測不可能な自己組織力のパターンをどのように捉えるのか。である。 4年制看護大学の看護基礎実習において研究者自身が直接実習を担当した学生19名について、実習期間中の表現(実習記録、対話記録、カンファレンス記録等)を手がかりに、実習期間中にどのような意識の変化が発生していたかおよびその意味を解釈したところ、学生全員に意識の拡張がみられ、きっかけとなるターニングポイントが存在することがわかった。実習中にターニングポイントがみられず、一見、平坦に実習を終了した学生であっても、実習を振り返る作業の中や教員との対話を行う中に転換点が先送りされていた。また、その自己の体験を振り返る対話を教員と行う中で、自己洞察が進み、実習体験の自らの看護者としての成長にとっての意味を考えることが促進されていた。その体験のプロセスにおいて自己を再組織化するプロセスの媒介となっていたものは、これまでの人生の中で作り上げられてきた自己のパターンへの気づきであり、最も多くの学生が語れれていたものは、中学または高校時代の友人とのかかわりにみる自己像であった。次に多かったものは、家族という人間関係の中にある自己であった。 今後、学生が看護臨地実習体験から自己を看護者として再組織化していくことを助成するための要因の分析をすすめる。
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