研究課題/領域番号 |
11877431
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研究機関 | 聖路加看護大学 |
研究代表者 |
長江 弘子 聖路加看護大学, 看護学部, 講師 (10265770)
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研究分担者 |
酒井 昌子 聖路加看護大学, 看護学部, 助手 (60236982)
川越 博美 聖路加看護大学, 看護学部, 教授 (50297066)
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キーワード | 地域看護 / 思考過程 / 看護記録 / 記録管理 / 記録様式 |
研究概要 |
本研究は、地域における3分野、すなわち在宅看護・行政看護・産業看護の3領域における記録様式の現状と問題点を明らかにした上で、地域看護職の活動成果や専門職の判断過程を記録に反映させる記録様式を開発することを目的としたものである。 初年度は現状の実態を把握した。その結果、地域看護職の働きかけや支援内容は、記録上では明らかにされておらず、今後各分野における看護職の支援内容や効果や評価を示すために記録様式の改善が急務であることが示唆された。 次年度〜最終年度においては、3分野の領域の経過記録を分析し、取り扱う問題領域について探索した。その結果、行政看護、産業看護領域は保健分野であり、疾患の説明や生活習慣に関する保健指導内容、健診結果の説明など健康教育的要素が強く、健康維持増進に関する知識確認や行動変容の面接経過内容が主で看護計画という記録はなかった。それに対し、在宅看護では経過記録と看護計画を分析することができ、病状観察や治療、医療処置、介護問題、家族支援など問題領域は多様であった。それゆえ、3分野の看護問題は質的に異なり統合は困難であり、地域看護領域で看護職が取り扱う看護問題は在宅看護領域が軸となり分類することが有効であることが明らかになった。そこで実証的な知見を得るために、関西及び関東近県の訪問看護婦の記録に関する研修会に参加した訪問看護ステーション管理者及び従事者計56名、30ケ所のうち、調査協力に同意した7ケ所の訪問看護ステーションに調査を依頼した。調査方法は全利用者の訪問看護記録のうち「訪問看護計画書」「報告書」を分析対象とした。記録をデータとして扱う倫理的配慮として、調査時の時点でのステーションの活動実績記録と共に、利用者全数の記録のステーション名称、利用者氏名と記載者氏名を伏せた状態で提供を受けた。 分析方法は、1つの看護問題につき事例番号をつけカードに入力処理しコード化した。内容の類似性に基づき分類しカテゴリ化を行った。分析に当たってはキーワード分類し、研究者及び訪問看護婦とともに内容の一致を確認しながら実施した。7ケ所の訪問看護ステーションの総利用者数は、調査時点の当該月あたり247名で、記載されていた看護問題は697コードであった。訪問看護の問題分類は、(1)日常生活環境領域、(2)介護環境領域、(3)心理・社会的領域、(4)医療危機管理領域、(5)病状管理領域、(6)危機管理領域、(7)家族環境領域の大きく7つの大分類が見出された。各々の下位には5から7つの中分類が形成され、看護介入は(1)観察、(2)教育、(3)治療、(4)調整など4領域に分類された。これらの分類を記録様式とリンクすることができれば、訪問看護記録内容が簡素化され、看護婦がどの領域にどのような介入を計画しているかがわかりやすく、まとまりのある記載内容となることが期待される。
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