1.熱ストレス(ヒートショック)を用いてラット筋組織のヒートショックタンパク質(HSP)を誘導し、HSPを高いレベルに維持することがその後の持久的な運動のパフォーマンスに如何なる影響をおよぼすのかを検討するための基礎資料として、本年度は、ヒートショックの時間条件、HSPの発現量、消長のタイムコースなどについてを検討した。 2.生後6ヵ月齢の雌SD系ラットをコントロール群および実験群に群分けし、実験群ラットは、41℃の暑熱環境下に60分間、麻酔を用いず曝露した。暑熱環境暴露中の体温変化をモニターするために、サーミスタを用いて直腸温を計測したところ、最初の20分間で急激な体温上昇をみられHSP誘導の指標とされる40℃のレベルに達した。直腸温はさらに上昇を続け、最終的に41.6℃に達した。すべてのラットがその後元気に回復し、死に至るものは見られなかった。無麻酔での60分間の暑熱環境暴露は、ヒートショックとして、有効なものであると推察された。 3.持久的運動において最も動員されるヒラメ筋における、暑熱環境暴露後のHSPレベルのタイムコースに伴う変化を明らかにするために、一定時間間隔でラットヒラメ筋を摘出し、ウェスタンブロッティング法によってHSP70のタンパクレベルでの分析、定量を行った。その結果、ヒートショックプロテイン(HSP)の発現はヒートショック後24〜48時間でピークを迎えたが、その後1週間程度まで高いレベルを維持していた。しかしながら、2週間後には、ほぼ完全に高温暴露以前のコントロールレベルへと低下していた。
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