研究概要 |
熱ストレスによるラット筋組織のヒートショックタンパク質(HSP72)の誘導が,高温下での持久的運動のパフオーマンスに及ぼす影響を検討した。 3カ月齢の雌SD系ラットが,小動物用トレッドミル上での走行を学習するため,分速15-22mで1日10分,週3回,2週間にわたってトレッドミル走行の練習を行った。走行学習期間終了48時間後,ラットは体重が等しくなるようにコントロール群およびヒートショック群の2群に分けられ,ヒートショック群は室温41℃の高温環境下に60分間曝露(ヒートショック)され,その後通常の飼育室(室温23℃)へと戻された。ヒートショックの24時間後,高温下での持久的運動のパフオーマンスを評価するために,両群とも室温30℃で毎分22mのトレッドミル上を走行不能(オールアウト)になるまで走行し,その運動時間が測定された。 オールアウトテスト直前(ヒートショック24時間後)での下肢骨格筋(ヒラメ筋,足底筋)および心臓のHSP72レベルは,ヒートショックによっていずれも高められた。また,オールアウトに至るまでの運動時間はヒートショックによって延長(コントロール群34±11分、ヒートショック群45±13分)したが,その差は有意には至らなかった(p=0.06)。 ヒートショックを用いた筋組織のHSP誘導によって,高温下での全身持久的運動のパフオーマンスを高められる可能性があることが示唆された。今後,局所的なHSP誘導と持久的運動のパフォーマンスとの関連を明らかにしていく必要であると思われる。
|