研究概要 |
本研究の目的は,我々が生来有している紫外線防御システムを増強することである.生来の防御物質として,ウロカニン酸(UCA)が知られている.紫外線の当たっていない皮膚ではUCAは主にtrans-UCAとして存在しているが,紫外線をあびるとそのエネルギーを吸収して,cis-UCAとなる.Cis-UCAは免疫抑制を引き起こすので,皮膚としては紫外線を浴びた後,すばやくcis-UCA含量を消去し,一方でtrans-UCAを回復することが重要となる.そこで,前駆体となるヒスチジン(His)摂取量を変えたヘアレスマウス(対照群,His-free群,His-rich群)に紫外線を照射すると,その後のUCA異性体含量がどのように変動するのかを調べた.対照群のマウスに紫外線を30分間照射すると全UCA量の60%程度がcis型となった(当てる前は5%程度).このcis型の割合は,紫外線照射後,ほぼ直線的に低下していき,24時間後で20%程度となった.また,全UCA含量は,紫外線照射により低下し,照射2時間後で照射前の1/3程度まで低下し,6時間後まで低下した値のままであった.その後徐々に回復し,24時間後では照射前の2/3まで戻った.His-rich群では紫外線照射を受けた後,全UCA含量の低下は対照群よりも少なく,かつ24時間後では照射前の4/5にまで回復した.一方,His-free群は照射後6時間までの変化は対照群と同じであったが,24時間後の回復が対照群よりも遅かった.cis-UCAの消去速度は,His-rich群で若干早い傾向が認められたものの,全UCA量が高いため,照射24時間後の皮膚中のcis-UCAの絶対量は対照群とほぼ同じレベルであった.したがって,His摂取量の増大は免疫力低下には影響をほとんど与えずに紫外線防御を高めるものと推察された.
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