次の二つの柱で研究を進めた。 (1)明治10年代以降、ドイツのいかなる科学教育思想・システム(教科書、教材、教授法、カリキュラム等々)が導入され、その思想・システムの特質はどのようなものであったかを解明するための資料を調査した。その際、科学教育に限らず、ドイツ教育学一般の導入動向と合わせながら検討した。そのため、我が国に導入されたドイツの科学教育の思想(家……ユンゲ、バイエル、クリューガー、等々)ごとに、その理念、教授法、教材、教科書、内容の選択と構成等々の特質をデータベース化して、分析・検討した。その結果、日本の理科教育書にはドイツの関連研究書が文献として明示されているものがあるが、その引用・参考関係は必ずしも明確ではない。したがってドイツ科学教育思想家をある程度限定して詳細な照合調査が必要であることが判明した。 (2)ドイツの科学教育の独自性を探るために、現代のドイツの科学教育の実態を広範に調査した。各州の科学関係の学習指導要領に現れた科学教育の動向、研究団体の科学教育構想(IPN、PING)、科学教科書における科学教育課程の動向、科学教育研究の動向について関係資料を収集し、分析を行った。その結果、第三回国際数学理科研究の調査結果(TIMSS)についての世論の盛り上がりが、ドイツでは珍しく連邦レベルの科学教育改革を促し、各州の科学教育課程改革に影響を及ぼしつつあることが判明した。
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