2000年度は、1999年度の成果をふまえて、自然体験の効果を評価するための尺度構成およびその妥当性・信頼性の検討のためにサンプル数の増加を図った。そして、これまで1日または1泊2日程度の短期キャンプ2件、1・2週間程度の中・長期キャンプ5件で前年度と同様の質問項目および追加した項目を用いて、自然体験・生活体験、感覚・感性、気分、達成感・充実感、自尊感情、思いやり、自然観などの変化について調査を行った。現在までの所、各質問項目毎の分析であるが、ある程度サンプル数がそろったところで、項目の縮約を行いたい。 結果については、おおむね前年度と同様の効果を確認した。すなわち、キャンプ中に自然体験や生活体験が増加し、感覚・感性、達成感・充実感、自尊感情、思いやり、自然観などがポジティブな方向に変化していた。しかし、気分について短期キャンプでは、緊張・不安、怒り・敵意、疲労感がキャンプ中減少したが、長期キャンプでは不変化またはやや増加傾向にあることが見いだされた。これらは長期に渡るキャンプでの対人関係に起因するものかもしれない。 また、そのうち1件(平成12年度文部科学省委嘱事業小国町子ども長期自然体験村)ではキャンプ解散3ヶ月後の時点で、キャンプ中の変化が維持されるかどうかの長期的効果の検討も行った。その結果、自然体験・生活体験、感覚・感性、達成感・充実感、気分などについてはキャンプ中の効果が維持されないことが確認された。しかし、自尊感情、思いやり、自然観については3ヶ月後も維持されており、長期的な効果をもつことが見いだされた。 さらに、新人看護職研修会への応用を試み、キャンプではないが1日自然体験によるリラクセーション効果や人間関係訓練の可能性を検討し、一定の成果をあげている。その他、医学教育への導入を図り、平成12年度大分医科大学集中講義「環境人間学」として、医学部医学科1年生に3日間実施し、参加学生の自然観や医療観や健康観の変化についても併せて検討しているところである。
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