英語教育現場が必要としている英語コミュニケーション能力の科学的評価方法として、本研究では、オンライン・テストシステムの構築を目標としている。平成11年度に、英語コミュニケーション能力のための基礎的な研究として、先行研究の結果から日本人英語学習者のリスニング能力を分析し、その傾向として、要点把握能力は優れているが、概要把握能力と相互作用能力が劣っていることを明らかにした。 平成12年度には、テスト開発以前に、英語コミュニケーション能力テストが、実際の教育現場にどのような影響を与えうるのか、そして、どのような評価システムが教育現場で必要とされているかなどを、明確にしておく必要性があったため、リスニングテストの波及効果に対する英語教師の意見を集約するためのアンケート調査を行った。アンケート調査は、1993年から日本のセンター試験に当たる大学修学能力試験にリスニングテストが導入されている韓国プサンの高校教師32名と1997年の個別学力試験からリスニングテストを導入した熊本大学がある熊本県内の35校の英語科主任教師から回答を得た。調査結果の概要は、次の通りである。 1.教師は、学習者が入試などの対策に迫られるなどの現実に直面した際には、確かにリスニングの指導方法を変える傾向が強い。また、全国的な規模の入試になるほど、指導に与える影響が大きく、英語コミュニケーション能力養成の上で、効果的な影響をもたらす。しかし、テスト対策のための指導に陥りやすい負の影響もあることも事実で注意も必要ある。 2.全国的な試験でリスニングテストを導入して7年が経過している韓国では、教師のリスニング指導能力と学習者のリスニング能力は、かなり向上しているが、熊本県内の調査ではまだ顕著な向上がどちらにも見られなかった。リスニングテストの波及効果が明確になるには、規模の大きさと実施の継続が重要なポイントとなる。 3.教師のリスニング指導能力向上のための講習の必要性については、韓国では94%の教師が必要と答えたが、現実的な問題としてあまりとらえられていない熊本県内の教師は、半分以下の43%の教師しか必要とは答えなかった。現場の切実度がますほど、教師は、指導技術の改善に積極的に取り組むことが明確になった。 英語コミュニケーション能力評価システムは、英語コミュニケーション能力を育成するために、教育現場によい影響をもたらしうるものでなくてはならない。そのためには、全国的なレベルで実施され、評価の結果が学習者自身にとって大きな影響を与えうるものでなくては大きな効果は望めないことが、上記アンケート結果からわかった。 来年度は、現実的に対応可能な評価システムの構築の完成をめざしたい。
|