留学生に対する日本語教育において語彙獲得の重要性は従来より指摘されているが、現在まで語彙能力とはどのようなものかという構成概念、及びその能力をどのように測定するかの操作的概念を明確に規定した研究は少なかった。したがって、本年度は、第一言語及び第二言語における語彙知識、語彙獲得方略に関する先行研究を収集・分析し、現在の語彙能力習得研究では、語彙能力をネットワークとして規定していない点を問題点として指摘した。さらに、語彙能力の習得状況をネットワークの密度として規定し、その密度の測定方法の検討を進めている。同時に、初級日本語学習過程にある留学生が語彙能力をどのように獲得していくかという学習方略の構成概念を規定し、その方略を継続的に測定するためのシステム開発を衣川が行った。筑波大学留学生センターにおいては、文法項目、表記の習得を促進するためのCAI、会話能力を向上させるための映像・音声データベースがWWWで公開され、留学生の日本語学習に利用されているが、その一環としてそのデータベースを利用した語彙学習システムを筑波大学留学生センターの予備教育コースに在籍する学習者に対して試用し、フィードバックを得た。その結果に基づき、現在は映像教材と語の連想記憶、画像情報と語との連想記憶、音声情報と語の連想記憶のデータ形式を規定し、データベースを拡充している。さらに、対象語を用いた例文作成、対象語を用いた例文提示のデータベース形式の検討を行った。
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