研究概要 |
(1)計算的な視点から行われる生命制御機構に関する従来研究・文献を調査し,物理化学的な現象・分子生物化学的な反応などを分析することにより計算メカニズムの基本操作として容認できる要素現象・要素反応を探究した.その結果「アニーリング(annealing)」,「融解(melting)」という従来から論じられているDNA分子に対する基本操作に加えて,「検知(detect)」という基本操作を用いると,計算能力として(従来の計算機と同等な)Turing万能計算能力をもつ分子計算モデルが実現できることを示した.これらの基本操作は1994年のScience誌に掲載されたAdlemanのDNA計算の実験で用いられたものと基本的に同じものであり,『単にある問題と解くだけでなく上記三つの基本操作だけで万能な計算能力を有する』ということを示したという意味で重要な成果である. (2)上記の計算モデルを抽象化し,かつ制限することにより新たな分子計算モデル(Computation by Conformational Change:CCC)を提案し,代表的な幾つかのNP完全問題を多項式時間で解く方法を示した.ただし,この場合計算材料の量は一般には指数的に増大する可能性はある.また,一般に『計算=自律的会合+形態変化』という計算パラダイムが成り立つことを提唱した. (3)さらに分子計算の新たな視点から細胞膜を抽象化した「膜計算モデル」を提案しその計算モデルの理論的能力を解析し,Turing機械と等価な万能計算の能力を有することを示した.
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