九州中部の九重火山の北西部に位置する大岳一八丁原地熱地帯で起こる地震の震源位置を決定した。さらに、地震派の縦波と横波の速度比Vp/Vsを求め、その速度比の変化で地震を区分して震源分布図が作成された。その結果、Vp/Vs比の高い地震(水の影響を強く受けた破壊による地震)は、調査域全域でほぼ海抜-1.5km以浅に発生していることが明かとなった。この深度は基盤岩の出現深度(海抜-700m)よりも深く、水が基盤岩の内部約1kmまで循環している様子が明かとなった。またこのように区分した震央分布から、Vp/Vs比の高い地震は直径3-4kmの範囲に集中し、かつNW方向およびNE方向に配列していることが明かとなった。これは当地域の熱水系のサイズを表すと共に、配列方向が当地域の断層の配列方向と調和的であることから、地下深部への水の循環には断層が重要な役割を果たしていることも示唆している。 さらに、研究対象地域の群発地震のVp/Vs比やm値の時間変化を検討し、群発地震がこれらの極小値から極大値に向かう過程で発生することが明かとなった。すなわち、まず水の影響があまりないところで比較的大きな破砕が進行し、次第に水の影響が強くそして小さな地震が増えていく過程で群発地震が発生し、さらにその後には一層その傾向が強くなることである。このように、地熱地帯における地震の発生には、地下を循環する水や、その主な通路である断層の存在などが大きく影響を与えていることが明かになりつつある。
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