研究概要 |
将来の核融合炉では極めて多量のトリチウムガスが燃料として使用される計画である。大気中にトリチウムガスが漏洩した場合、トリチウムガスは主として土壌表層で酸化されてトリチウム水になる他、水田や埋め立て地のメタン生成菌によってトリチウム化メタンに変化して大気中に拡散する。また装置の金属との接触によってメタンを含む有機物に変化することも報告されている。大気中のトリチウム化メタンはトリチウムガスと並んで比放射能が高いことが知られているが、その環境動態は具体的にはほとんど明らかでない。従って、環境でのトリチウム化メタンの動態、特にメタン酸化菌の実体と寄与を明らかにする目的でこの研究を計画した。環境におけるメタンの動態のファーストステップであるメタンの酸化に関わるメタン酸化菌とその分布を知るために、まずメタン生成の盛んな水田土壌から菌の検索をすることにした。まず湛水してある水田土壌と湛水していない水田土壌の表層土壌から、メタン酸化の産物であるメタノールを炭素源とし、窒素源を異にする2種類の培地(NMS,MV培地)を用いてメチロトローフの分離を行い、その中からメタノールのみを炭素源とする従属栄養の菌株を選別した。その結果湛水してある水田の表層土壌(深さ0-2cm)からNMS培地で7株,MV培地で3株、湛水していない水田の表層土壌(深さ0-2cm)からNMS培地で5株,MV培地で28株が得られた。これらの菌株の1gの土壌当たりの出現数は、湛水してある水田の表層土壌ではNMS培地で3.7E+5、MV培地で8.2E+3であり、湛水していない水田の表層土壌ではNMS培地で1.3E+5、MV培地で1.3E+5であった。これらはほとんどがグラム陽性菌であった。
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