海洋植物プランクトンの光合成により生産される有機物のなかで、どの程度が溶存態有機物として細胞外に排出され、さらに排出された溶存態有機物のどの程度が難分解性溶存態有機物として保存されるのかを明らかにする目的で博多湾において炭素安定同位体(^<13>C)をトレーサーとして実験を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 1)植物プランクトンの光合成により生産された有機物のなかで、24時間以内に溶存態有機物として細胞外に排出された割合は10%前後であった。 2)一方、植物プランクトンの死後に生成される溶存態有機物量は30日〜60日程度で最大となった。これは、植物プランクトンの死後、細胞壁が壊れて原形質が溶存化する過程が溶存態有機物の主要な生成要因であることを示している。 3)紫外線照射により分解されない溶存態有機物(難分解性有機物)の全溶存態有機物に対する割合は、実験開始直後は40%程度であったが、時間とともに増加する傾向を示した。 4)このような難分解性溶存態有機物の13C同位体比も時間とともに増加する傾向が認められた。これは植物プランクトンに生産された「新鮮な」有機物も、数ヶ月の間に紫外線照射に対して安定性を持つ難分解性溶存態有機物に変化したことを示唆するものと思われる。
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