H12年度に引き続き、中部山岳地域の八方尾根(標高1850m)と麓の白馬村の(標高830m)の2カ所で降水とガス・エアロゾルを同時に採取し、ウオッシュアウトによる大気から降水への物質の取り込み過程を調査した。降水は湿性降下物を1降水毎に採取した。ガス・エアロゾルの採取は4段ろ紙法により6時間間隔で行った。観測は2001年6月から7月にかけて行い、5回の降雨を採取した。しかし、今回の観測では八方尾根の降水量が白馬村の降水量を大きく上回る傾向があり、5回中4回は1.7〜3.2倍の差があった。このため今年度のデータのみでは解析が困難であるので、3年分のデータを用いて硫酸塩の物質収支と洗浄比を求めた。その結果、降水中のSO_4^<2->濃度は約1000m落下する過程で平均0.28mg/L増加し、これらはウオッシュアウトによる取り込みであると考えられた。SO_4^<2->の取り込みに対するウオッシュアウトの寄与は平均33%であり、この値は向井らが中国山地で得た0.35とほぼ同じ値であった。SO_4^<2->の洗浄比は幾何平均値が415であり、向井らが九州で得た450とほぼ同じ値であった。大気からの硫黄化合物除去量(SO_4^<2->+SO_2)に対する降雨によるSO_4^<2->の沈着量は収支バランスのとれるケースが少なく、0.2〜5.3とばらついた。これは、観測を6時間間隔で行ったため途中で気団の入れ替わりがあったものと推定され、風向・風速を加味した解析や時間分解能を上げるなどの対策が必要であると思われる。洗浄係数に関しては12年度に降水強度との関係式を得ているが、様々な条件設定が可能であるため今後さらに解析を進める予定である。
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