研究概要 |
SSDD法は短時間にRIと同等の感度で安価に行うことが出来る反面、選択的逆転写反応の特異性の低いこととそれによる偽陽性が多いことが問題点である。これらの問題点はDD法全般に当てはまる問題点といえる。従って、選択的逆転写反応を至適化することが出来れば従来法より利点のあるSSDD法の高いポテンシャルを生かすことが出来る。そこで、本年度は選択的逆転写反応の特異性を向上するための反応条件検討を行った。モデルとして精巣mRNAをTの数と3'端の異なる様々なアンカープライマー(3種類のGT15M、3種類のGT15VN、4種類のT12VN、4種類のT11VN)、3種類の逆転写酵素(AMV RTase、ReverTra Ace RTase、SuperScript RTase)、各種温度(37、40、42、45、47、50℃)で転写し、発現量の異なる3種類の遺伝子特異的プライマー(RFP,protamine1,mrp1)でPCR行い選択的逆転写が起こるかどうかを検討した。もし選択的逆転写の特異性が高ければ異なるアンカープライマー3'末端の一つで逆転写したcDNAでのみ遺伝子特異的プライマーでPCR増幅されることが期待された。結果は、50℃で逆転写した場合、protamine1遺伝子以外はPCR増幅されず逆転写されないことがわかった。さらに、低い温度で逆転写した場合には本来増幅されるべきアンカープライマーだけでなく増幅されないはずのプライマーでも増幅されこれらの条件では逆転写の選択性が低いことがわかった。これらの結果は、アンカープライマーの3'末端で選択を行うことが出来ず、これらのプライマーが容易にミスマッチを含んでペアリングする事で逆転写が進行してしまうことを示している。従って今後は逆転写反応でcDNAを分画するのではなくその後のPCR反応で厳密な選択を行うことを考えている。
|