新しい内分泌かく乱物質として注目されているTCPメタンおよびTCBメタノールの分析法の検討および若干の生物試料の分析を行ない、以下のような研究成果を得た。 1)電子捕獲型検出器付ガスクロマトグラフおよびガスクロマトグラフ質量分析計におけるTCPメタンおよびTCBメタノールの検出感度や再現性について検討し、1ppb程度の残留濃度まで高精度で測定できる条件をみいだした。 2)既存の有機塩素化合物の分析法を改良し、ソックスレーによる抽出、フロリシルドライカラムによる脱脂、フロリシルウェットカラムによる分画、上記機器類による定量から構成される分析法を構築した。 3)TCPメタンおよびTCBメタノールの汚染レベルがきわめて低い南氷洋産のミンククジラ脂肪組織にこれら物質を添加して回収試験を行ない、それぞれ95±2.7%および100±6.1%の良好な成績を得た。 4)ロシアのカスピ海、バイカル湖、カラ海で捕獲したアザラシ、および日本の近海で捕獲したアザラシや鯨を分析に供し、TCPメタンおよびTCBメタノールをすべての試料から検出した。この研究により、この物質による汚染が地球規模で拡がっていることを明らかにできた。 5)アザラシや鯨の試料から検出されたTCPメタンおよびTCBメタノールの残留濃度はDDT濃度と相関を示し、この物質の汚染源はDDTの不純物であることが示唆された。
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