新しい内分泌かく乱物質として注目されているTCPメタンおよびTCBメタノールの高等動物汚染の実態解明を試み、以下のような研究成果を得た。 1)日本人の脂肪組織から、TCPメタンおよびTCBメタノールを検出し、この物質による汚染がヒトにまで及んでいることを世界で初めて実証した。 2)米国東部沿岸や日本の沿岸に座礁した鯨類、ロシアのカスピ海、バイカル湖、カラ海で捕獲したアザラシ類、および日本の近海で捕獲した鰭脚類すべてからTCPメタンおよびTCBメタノールを検出し、沿岸性の鯨類は相対的に高い濃度で蓄積していることをみいだした。 3)北太平洋の寒帯、温帯、熱帯に分布する多種類の鯨類からTCPメタンおよびTCBメタノールを検出し、この物質による汚染が陸域、沿岸域だけでなく地球規模で拡がっていることを明らかにした。 4)哺乳動物から検出されたTCPメタンおよびTCBメタノールには、年齢蓄積性や性差がみられ、その生物蓄積の態様は、PCBやDDTと類似していることが示唆された。 5)ヒトや野生の哺乳動物から検出されたTCPメタンおよびTCBメタノールの残留濃度はDDT濃度と相関を示し、この物質の主な汚染源はDDTの不純物であることが示唆された。しかし、沿岸性の鳥類の一部ではDDTとの相関が明瞭でないものもあり、他の汚染源の存在も推察された。
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