研究課題/領域番号 |
11878100
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邊 隆司 京都大学, 木質科学研究所, 助教授 (80201200)
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研究分担者 |
矢野 浩之 京都大学, 木質科学研究所, 助教授 (80192392)
桑原 正章 京都大学, 木質科学研究所, 教授 (40035978)
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キーワード | Plastic / Biodegradable / Molding / Wood / wood lot fungi / lignin |
研究概要 |
環境負荷の大きい石油化学工業から脱却するため、再生可能な植物資源から生分解性のある高機能成形材料をつくることは、地球環境問題を解決する上で必須な課題である。本研究では木材腐朽菌によりリグニンを部分的に切断した後、高圧・熱圧複合処理により化学薬品を使用することなく成形材料を製造することを目的とした。はじめに成形材料作成に適したリグニン分解性担子菌とその培養条件をスクリーニングするため、当研究室保有の木材腐朽菌からリグニン分解能力に優れる白色腐朽菌とセルロースの分解力が高いとされる代表的な褐色腐朽菌を選んで木粉培養を行った。その結果、白色腐朽菌Ceriporiopsls subvermispora、Coriorus hirsutusおよび褐色腐朽菌Tyromyces palustrisに高い熱可塑性向上効果を認めた。培養済み木粉を熱圧成形して得たペレットの力学的性質を調べた結果、これらの菌で前処理した成型物は、未処理の成型物に比べMORとMOEが向上しており、菌処理をすることによってより少ないエネルギーで木粉成型物が得られることが明らかとなった。腐朽材の動的粘弾性を測定したところ、特にT.palustrisにおいて顕著なリグニンの熱可塑性の増大が認められ、セルロースの分解力が高いとされる褐色腐朽菌処理においてもリグニンの構造変化が起こり、リグニンの熱可塑性が付与されることが明らかとなった。腐朽材の化学成分分析と2重染色法による顕微鏡観察も行った。以上のように、本年度の研究から、木材腐朽菌処理が木材の熱可塑性を向上させ、その結果より少ないエネルギーで高強度の木粉成型物が得られることが示された。
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