本研究の目的はミカン搾汁の残渣中の主要成分であるペクチン酸を低分子化させることにより水溶液に可溶化させ、このような水溶液を用いて土壌中の鉛イオンなどの重金属を除去することである。低分子化によりペクチン酸はその構成単位である環状のβ-ガラクツロン酸、あるいはそのオリゴ体に変換される。このために130℃の熱水で分解することを試みたがβ-ガラクツロン酸は生成されず、直鎖のα-ガラクツロン酸が生成された。現在β-ガラクツロン酸やそのオリゴ体が生成される条件を模索している。 β-ガラクツロン酸の錯形成に関する基礎研究も並行して行った。ここでβ-ガラクツロン酸は市販されていないので、市販のα-ガラクツロン酸より合成した。電位差滴定法により酸解離定数や鉛、銅などの金属イオンとの錯形成の安定度定数を求めた。その結果、pKa=3.08と求まり、以前求めたペクチン酸のpKaの値(=3.40)よりさらに低い値となり、金属イオンに対しての強い錯形成能を予想させるものとなった。 また鉛イオンを多く吸着することが知られている代表的な粘土鉱物のバーミキュライトに鉛を吸着させることにより人工的な鉛汚染土壌を調製し、β-ガラクツロン酸水溶液を用いてこのような人工汚染土壌からの鉛の溶離・除去も試みている。
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