研究概要 |
シロイヌナズナの種子を播種し二ヶ月後成長した植物体(全草)を収穫、メタノール冷浸抽出エキスを得た。比較的少量のサンプルで成分分析をしなければならないことを考慮し、手持ちの標準品の多いトリテルペン成分の検討から始めることにした。まずメタノールエキスに同量の20%水酸化カリウムを加え加温ケン化した。ヘキサンで脂溶性画分を抽出、TLC(展開溶媒:ベンゼン-アセトン系)で分離し、4,4-ジメチルステロール画分を得た。この画分につきLCMS解析を行ったところ、β-アミリン(60%)、ルペオール(20%)、シクロアルテノール(5%)、α-アミリン(5%)、タラキサステロール(5%)、ブチロスペルモール(3%)、及び、微量の未同定トリテルペン(2%)を検出した。シロイヌナズナからは、シクロアルテノール合成酵素、ルペオール合成酵素のcDNAがクローニングされており、また、ゲノム遺伝子解読から、これらの他に4種のオキシドスクアレン閉環酵素(OSC)相同遺伝子の存在が知られている。今回得られた情報は、ゲノム上の4種の機能未知OSCの同定において極めて貴重なものになると思われる。今後は、トリテルペンのみならず、フラボノイドなどの他の化合物群についても精査し、二次代謝生合成に関与する遺伝子の機能解明へ向けて、化合物レベルでの検討を進めたいと考えている。
|