コレステロールによって修飾されるタンパク質は、中枢神経系の正常発生に必要なシグナル伝達タンパク質分子、Sonic hedgehog(Shh)が知らされているのみである。しかし、他の細胞・組織でもコレステロールで共有結合的に修飾されるタンパク質が存在する事が本研究によって明らかにされた。コレステロール修飾タンパク質の構造と機能についてはShhの具体的な機能でさえ充分には解明されておらず、未開拓の領域として残されている。本研究は、構成的にコレステロールによって修飾されるタンパク質の構造と機能を解明する事を目的にしている。 まず、培養細胞(CHO-K1、COS1、COS7)を用いて、コレステロール修飾タンパク質の検出を行った。セミコンフルエントにまで細胞を培養したあと、培養液中の血清を脱脂したものに変え、4-^<-14>Cコレステロールを加えて48時間培養したあと細胞を集め、PBSで洗浄後、SDS-PAGEを行った。細胞内の遊離コレステロールはブロモフェノールブルーよりも先に泳動され、また脂肪酸などによるエステル化コレステロールはブロモフェノールブルーと同じ位置に泳動されるので、15%アクリルアミド濃度のゲルで、10kDa以上のタンパク質とは分離できる。 その結果、少なくとも15kDa、17kDa、18kDaの3種類のタンパク質がコレステロールで修飾されていることを確認した。これは、卵巣細胞や腎臓の細胞でも確認されたことから、普遍的・構成的に細胞に発現しているものと推定された。また、いずれのタンパク質も膜画分に存在している。現在、クローニングを目的とした部分一次構造決定のため、二次元展開ゲルからの抽出分離を試みている。
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