研究概要 |
これまでに我々のグループでは,高度好熱菌Thermus thermophilus HB8のDNA修復系などの研究を行ってきた。しかし,80℃で使用可能な耐熱性の薬剤耐性遺伝子が存在しないために,遺伝子操作が不便であった。これまでは,例えば,ロイシン合成系の遺伝子(leuB)を欠失させた栄養要求性好熱菌を利用し,好熱菌体内にleuB遺伝子を持つプラスミドが導入されれば,好熱菌の栄養要求性が相補されるような系を用いてきた。しかし,栄養要求性で選択するための合成培地作りは,通常の培地作りよりも多くの手間や時間を必要とし,しかも,その合成培地での好熱菌の生育速度は遅いためプレートが乾燥してしまうこともある。そこで,高度好熱菌においても,大腸菌と同程度容易に遺伝子操作が行えるようにするために,カナマイシン薬剤耐熱性遺伝子を85℃まで耐熱化した。得られた耐熱性変異型酵素の中から約100個のクローンを選択し,塩基配列を決定した。そらのアミノ酸配列を比較して,置換アミノ残基の中から耐熱化に寄与するいくつかのアミノ酸残基を同定した。さらに,野生型酵素にそれらの変異を導入して,耐熱化に寄与していることを確認した。他の薬剤耐性遺伝子についても耐熱化を行っている。
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