光シグナル伝達物質の分子的実体の解明を目的として、光シグナル伝達を仲介するプロテインキナーゼの精製と特性解析を行った。 前年度までにダイズ光独立栄養培養細胞(SB-P細胞)の可溶性画分に、光依存的な一過的チロシンリン酸化を受けて活性化する46 kDaセリン/スレオニンプロテインキナーゼを検出し、LAPK(light-signal activated protein kinase)と名付けた。本年度はLAPKの精製を進め、分子量(46 kDa)とヒストンキナーゼ活性を指標に各種クロマトグラフィーによりインゲルアッセイでプロテインキナーゼとしては単一のバンドにまで精製した。部分精製した46kDaプロテインキナーゼの特性を解析し、本酵素の活性化/不活性化はチロシン残基のリン酸化/脱リン酸化を伴うことや、本酵素がMBPとヒストンをリン酸化するが、カゼインをリン酸化しないことなどを明らかにした。これらの精製酵素の性質は細胞抽出液を用いて既に明らかにしたLAPKの性質と一致した。また、これらの性質はMAPキナーゼの性質とも一致し、LAPKがMAPキナーゼ様プロテインキナーゼの一員であることが推察された。さらに、過酸化水素やUV-Aでは活性化されなかったことから、LAPKの光による活性化は活性酸素等による二次的な影響ではないと考えられた。今後、本酵素の完全精製と部分構造解析、cDNAクローニング、さらに遺伝学的手法による機能解析を進め、引き続き光シグナル伝達におけるLAPKの役割を解明する。
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