研究概要 |
タンパク質同士のイソペプチド結合による結合反応は、ユビキチンに特異な反応ではなく、最近ユビキチンに類似した一群の分子が発見されて注目されるようになった。我々はユビキチンと相同性のない新規のタンパク質結合反応系の存在を明らかにし、Natureに報告した。さらに最近Apg遺伝子群の中に第二のユビキチン様タンパク質Apg8が共通の活性化酵素によって活性化され、特異的なE2を経て膜リン脂質の主要成分の1つホスファティジルエタノールアミンに結合することを報告した。この等の事実はユビキチン類似体による修飾反応がもっと広く存在する可能性を示唆している。本研究はさらにこのようなタンパク質結合系が存在する可能性について、既に全ゲノム解析が完了した酵母の系で徹底的に検証することを目的とした。酵母のゲノム情報を網羅的に解析し、検討した結果、恐らくこれまで単なるホモロジーサーチからは決して見いだすことの出来ない新たなユビキチン様のmodifierの候補を見いだすことに成功した。このUBR1遺伝子はC-末端にGly-Glyを持つ99個のアミノ酸からなるタンパク質をコードしている。確かにUbr1は細胞内でGlyを介して他の因子と結合体を形成している。urm1,uba4の遺伝子破壊株はいずれも増殖が温度感受性となる。Ubr1はE1酵素に弱い相同性を持つ新規のタンパク質Uba4とチオエステル結合を形成することによって活性化される。Urm1とUba4は原核生物のモリブドプテリンやチアミンの生合成経路の酵素と相同性を持っている。この点はユビキチンとその類似タンパク質の進化を考える上で大きな手がかりを与えるものと思われる。現在その標的タンパク質の同定を急いでいる。
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