研究概要 |
膜7回貫通型受容体は,様々なアゴニストと特異的に結合して活性化され,Gタンパク質などを介して細胞内に結合情報を伝達する。本研究は,膜7回貫通型受容体の三次元構造をX線結晶構造解析により明らかにし,その機能の構造生物学的な理解を得るため,受容体の大量発現と結晶化の方法の構築を目的とする。 研究初年度では,従来は最大でもμg/(L培地)オーダーの発現量しか得られなかったヒトβ2アドレナリン受容体の発現レベルを,メタノール資化酵母を用いて約2mg/(L培地)程度まで飛躍的に高めることができた。受容体の全長DNAを酵母のα-ファクターのシグナルの下流に連結させ,これらの間には,発現量を高め,かつこの間で切断が生ずるようにペプチド部を設けた。受容体の下流には,アフィニティー精製のためのタグを付した。酵母ゲノムに発現ベクターをエレクトロポレーション法によって組み込み,分子表面に糖鎖が付加した完全長の受容体タンパク質を大量に発現させ,界面活性剤によりタンパク質を可溶化して,リガンドとの結合活性も確認した。 結晶化のためには糖鎖の均一化と短鎖化が有効と考えられ,糖切断酵素Endoglycosidase HFを用いて効率良く短鎖化する手順を構築した。タンパク質の精製では,Ni-Chelating,DEAM,Mono Q,CM Sepharose,Blue Sepharose,Hydroxy Apatite,Superoseの各カラムが有効であることを見出した。これらカラムによるクロマトグラフィー操作によってタンパク質を高度に精製できるとの見通しを得た。 次年度には,発現した受容体の精製と結晶化を進める計画である。なお,ヒトβ3アドレナリン受容体についても,メタノール資化酵母に遺伝子を組み込んで高発現株の樹立に向けた試行を開始している。
|