研究課題
膜プロテアーゼFtsHとその調節タンパク質の複合体を、膜に存在する(インタクトな)状態を維持したままで解析することを目的としてBN-PAGEの適用を試みてきた。そのために、(1)膜に存在するFtsH複合体をインタクトなまま可溶化する条件の確立と(2)大腸菌タンパク質の解析におけるBN-PAGE法の確立をめざしてきた。しかし、残念ながらFtsH複合体をインタクトなまま可溶化する有効な条件を確立することはできなかった。可溶化力の異なる界面活性剤を試し、また可溶化力の弱い界面活性剤と強い界面活性剤を組み合わせるなどの条件を検討したが、良好な結果を得ることはできなかった。BN-PAGEが発表されて10年が経つが、大腸菌を始め細菌の膜タンパク質複合体の解析への応用例はこれまで報告されていない。大腸菌の膜タンパク質の可溶化条件が厳しく、このことがBN-PAGEの大腸菌における応用を難しくしている要因であると思われる。新たな界面活性剤の開発などが必要かもしれない。結果として、現時点ではBN-PAGEを大腸菌で確立することはできなかったが、この研究中に温度感受性ftsH変異株の新しい表現型としてミニFプラスミドの分配阻害を見いだした。ミニFプラスミドの分配装置は膜上の特定の位置に形成されるタンパク質複合体と考えられている。分配装置の解析から今後新たな突破口が開ける可能性もあり、その意味においては一定の成果を得ることができた。
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