ミトコンドリアは膜間スペースにシトクロムc、AIF、カスパーゼ9などのアポトーシス因子を貯留しており、細胞外からの死のシグナルに応じてそれらをミトコンドリアから細胞質に輸出し、これによってアポトーシスのカスケードがスタートする。しかしこれらの因子がミトコンドリア外に輸出される機構は殆ど不明のままである。 我々は今回の助成によって以下の事柄を明らかにすることができた。 【1】単離したミトコンドリアから細胞質に依存してシトクロムcを遊離する反応系を確立した。この反応はスタウロスポリンとdATP(またはATP)を要求する。 【2】この反応系を利用して細胞質からシトクロムc遊離に関る因子を精製し、それが20Sプロテアソームであることを明らかにした。 【3】素反応の解析をおこない、次のような経過でシトクロムcの遊離が起こることを明らかにした。 (1)スタウロスポリンはミトコンドリアに作用し、シトクロムcをexport competentな状態にする。 (2)20Sプロテアソームがシトクロムcをミトコンドリアから引きだし、そのシトクロムcは20Sプロテソームの空洞内に格納される。(3)dATP(またはATP)の加水分解によってシトクロムcは20Sプロテアソームから解離する。
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