研究概要 |
1.近年、中枢神経系のニューロンはいろいろな神経伝達物質に関わる酵素、生理活性物質(ペプチド、カルシウム結合蛋白質等)、あるいは受容体などの遺伝子発現により機能的に分類されつつある。こうした特定の遺伝子を発現するニューロンを選択的にトランスジェニックマウスを用いて染色することをこの研究で試みた。発現遺伝子のプロモーター部分を用いてトランスジェニックマウスを作製するが、その際、導入する遺伝子に、細胞膜へ移行するシグナルペプチドを結合した外来性蛋白質(Green fluorescent protein;GFP)を発現させる(Moriyoshi K et al.,Labeling neural cells using adenoviral gene transfer of membrane-targeted GFP.Neuron 16:255-260,1996)。外来蛋白質への抗体を用いた免疫組織化学法で、遺伝子を発現しているニューロンの細胞体・樹状突起・軸索をGolgi染色様に染色する。現在、ParvalbuminとCalretinin(これらは大脳皮質のGABA作動性ニューロンの別々のサブグループに発現している)というカルシウム結合タンパク質のトランスジェニックマウス作成を、プロモーター部位を含むBACを用いて試みている。Calretininトランスジェニックマウスは作成済みで、pGFPの発現特異性を検討している。 2.中枢神経系の投射ニューロンをアデノウィルスベクターあるいはSindbis virusベクターに感染させ、膜移行シグナルを導入したGreen fluorescent protein(pGFP)を発現させ、Golgi染色様に標識することに成功した。 3.大脳皮質のGABA作動性ニューロンの仲でμオピオイド受容体を発現しているサブグループの化学的特性を検討した。μオピオイド受容体発現ニューロンはVIP,Calretinin,ChAT,Cholecystokinin,CRFなどを発現するサブグループに属しているが、そのなかで独得なグループをなしていることがわかり、μオピオイド受容体のプロモーターを用いたトランスジェニックマウス作製の基礎データとなった。
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