研究概要 |
1,GFP遺伝子導入線虫C.elegansによる分子ストレスの検出 C.elegansHsp90遺伝子のプロモーター領域とGFP遺伝子の融合遺伝子を作製し、C.elegansに導入した。昨年度作製したGFP遺伝子導入C.elegans株は、種々ストレス下での反応を検出できたが、遺伝的に不安定であるという欠点があったので、新たにGFP遺伝子導入C.elegansを作製した。これらのGFP遺伝子導入C.elegansは継代を重ねても表現型が変化せず、ストレスに応答した蛍光の発色も良好であり、今後の分子レベルストレスの検出に有効であると考えられる。 2,分子ストレス下におけるHsp群遺伝子mRNAの定量 GeneAmp2000装置を用いたmRNAの定量の条件を種々検討し、凍結破砕法によるtotalRNAの抽出、One-StepRT-PCRの組み合わせが最適であるという結論を得た。また、PCR産物の定量については、サイバーグリーン法とTaqmanProbe法を比較したが、結果に有意差は認められず、サイバーグリーン法で十分であることが確認された。以上の手法で分析した結果、Hsp90mRNAは、32℃、2時間の処理で約6〜7倍に、1μMCdで約2倍に増加した。また、Hsp7OmRNAでもほぼ同様の結果であった。Hsp90遺伝子の突然変異株であるdaf-21株を用いて、32℃、2時間の処理下でのHsp90mRNA量を測定したところ、野生株の場合よりもさらに多量(8〜9倍)のHsp90mRNAが発現していた。このことは、Hsp90遺伝子発現制御でのネガティブフィードバック機構の存在を示唆しており興味深い。 3,まとめ 以上の研究によって、C.elegansHsp遺伝子群を利用した安全性評価システムの有用性が確認できた。しかし、毒物の作用を分類できるデータベースの構築には至らなかった。今後の課題は次の通りである。 ・分析するHsp遺伝子の種類の増加(特に低分子Hsp群)。 ・野生株のC.elegansでは、強固なクチクラ層のために化学的毒性検出感受性が十分ではないので、クチクラ層を構成分子に関する突然変異体を用いた検出感度の向上。
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