研究概要 |
1)VEGF徐放カプセルの調製とその徐放特性評価: カプセルについては調製の容易さから,乳酸グリコール酸・ゼラチン被覆マイクロカプセルを選択した.これにモデルタンパクとしてFITC-BSAを包括固定化し,その徐放特性を調べたところ,初期固定化率は70-80%であり,徐放は約2週間にわたってほぼ直線的に行われた.またこのようなマイクロカプセルと肝細胞とからなるハイブリッド型の肝組織を能率良く再構築するためには,カプセルをファイブロネクチンなどの細胞と特異的に結合するタンパク質で予め被覆することが不可欠であった(人工臓器:印刷中,Cell Transplantationに受理).このようなマイクロカプセルに,ヒトリコンビナント血管内皮細胞成長因子(VEGF)と酸性線維芽細胞成長因子(bFGF)を包括し,その徐放特性を定量することを試みたが,微量のVEGFやbFGFが溶出実験中に容器内壁へと吸着したため,液中への十分な徐放を検出するに至らなかった. 2)肝実質細胞・各種血管内皮細胞・マイクロカプセルの共培養: 調製したマイクロカプセルを用いて,コラーゲンゲル中で,ラット感細胞凝集体が外側に配置された各種血管内皮細胞株の凝集体との混合培養を行い,肝細胞凝集体内部にこれらの細胞が誘引されるか否か検討した.その結果,VEGFとbFGFを包括したマイクロカプセルを持つ凝集体周囲では,内皮細胞の増殖性・生存性が改善されていることが確かめられたが,内部へ内皮細胞を誘引する効果は観察されなかった.別の実験で,凝集体に再組織化した肝細胞は極めて安定であり,これらの因子のmRNAの発現が顕著に抑制されていることが確認されたことから,さらに多量のVEGFやbFGFをカプセルに包括するか,肝細胞自体にやや障害を与えて,組織再構築能を引きだしてやることなどが今後必要と考えられた.
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