研究概要 |
生体信号の解釈を容易にするために,2つの方向への研究の拡張がなされてきた.1つは,時間方向である.たとえば,長時間計測が可能になり,生体信号が決して定常ではないこと,したがって,それを生成する生体は時不変ではなく、時変であることがわかってきた.もう1つは信号解析に非線形力学系の考え方が導入されたことであある.本研究課題ではまず,第1の方向の研究として,「時系列から分岐構造の解析」というテーマをあつかった.制御可能なパラメータを持つ力学系が与えられたとする.その力学系のそのパラメータに関する分岐構造と同様な分岐構造を持つパラメータ化された関数(予測関数)を種々の方法で求めた.この関数のパラメータ空間の領域(射影領域)のパラメータ値に対して,この関数(モデル)のダイナミックスは与えられた力学系のそれと同じである.いいかえれば,この領域でモデルの分岐構造を与えられた力学系の分岐構造とみなせる。このことを利用して,未知の力学系が生成した時系列からその力学系の分岐構造を再構成した. 以上の成果をふまえ,心循環系,内分泌系の生理学の知識を総合してホメオダイナミクスの概念について検討した.複雑なダイナミクスをもつ生体の部分システムは相互作用して全体で安定性を保っている.ホメオダイナミクスを実現するためには生体システムが非線系力学系として機能していることを示唆する.このような例をヒトの二足歩行の動力学と中枢制御機構にもとめ,考察した.
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