不飽和結合を有するポリエステルの合成について検討した。不飽和基を有するαヒドロキシ酸を含有するポリエステルの合成を試みた。これまでの研究からこのような単量体のホモポリマーは成形性に乏しいことが考えられるため、乳酸や他のヒドロキシ酸と共重合を行う。得られた高分子の特性解析、表面物性、ラジカル反応性、生分解性、細胞との相互作用などについて検討し、本研究ではTissue Engineering分野に応用可能な物性を有する不飽和生分解性ポリマーを得ることを試みた。 不飽和ポリエステルとして桂皮酸誘導体を検討した。具体的には4-ヒドロキシ桂皮酸(HCA)と乳酸との共重合によって種々の組成のポリエステルを合成した。HCAの導入量、分子量変化による物性の変化(物理的性状、溶解性、熱的性質、バルク物性)および生分解性(PH依存性、分子量変化、重量変化)を検討した。その結果、HCAと乳酸の共重合には無水酢酸を溶媒として用いると、HCAの変性が起こりにくいことが分かった。HCAの導入量を増加すると成形性および溶媒可溶性が低下した。このため、本来の目的に合致する組成を探索したところ、HCA導入率の最高値は20%程度であることが分かった。同程度の分子量のポリ乳酸と比較して、分解は遅かった。これはHCA部分が疎水性であるためと考えられる。HCAは光反応によってホモ二量化および解離反応する特性を有している。共重合体のHCA成分の光反応性について検討を行った。紫外光照射によりHCA部分に由来する吸収ピークが減少し、ポリマー内に導入されたHCAも光反応性を有していることが明らかとなった。引き続き、ラジカル重合性活性および生理活性物質固定化の検討を行う。
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