研究課題
研究計画書に記したように、本補助金を用いての今年度の本研究の計画は、前半に海外の研究者も招聘した上で認知言語学の研究集会を行い、後半に前期の研究集会の成果を生かして認知言語学者と複雑系の研究者との相互交流を図って、翌年度以降の更なるプロジェクトへの道筋をつけることにあった。しかし、前半部分の認知言語学の研究集会に海外の認知言語学者を招聘するよりも、むしろ後半部分に言語の進化なども視野に入れて研究している認知言語学者のWilliam Croft教授を招聘する方が認知言語学と複雑系の科学者の交流の上では有益と判断し、7月には本科研メンバーの山梨・大堀・坪井・西村が所属する文法学研究会のシンポジウムを開催して、その類型論的意味あいや認知基盤・普遍性を切り口として文構造の階層性をめぐる討議の場を設けた一方で、William Croft教授は12月に招聘して言語の進化をもトピックとしてセミナー及びディスカッションを行った。そのほかにも、本研究の企画調査的性質に鑑み、橋本のスイスでの人口生命国際会議への参加や、独自の言語学の伝統を背景とするカイロの言語学者との西村の交流など、本科研メンバー以外の研究者との積極的な交流も図られた。また、言語の新たな生成の現場である、対面の会話の重要性が認識され、そのデータベース構築にも着手したが、本研究を通して一層明らかとなった、言語の数理的研究モデルの重要性もあって、それに伴う消耗品(データ保存のためのハードディスク、メモリー、プリントアウト用トナー等)が予想以上に必要になった。逆に、インターネットの発達により、直接会わなくてもできる協同研究部分が予想していたよりも多く、国内旅費は意外と少なく済んだ。本研究の今後の意義を考え、成果を確立しておくための研究集会を最後に行う予定である。
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