研究課題
本研究は位相回転法を用いて大強度・高品質2次ビームをつくり、それを用いて新しい物理の地平を切り開こうとするものである。研究の主眼は、どのようなビームが可能か?またそれを使ってどのような物理が展開できるか?を検討し、結論を得る事に在る。まずハードウエアーの観点から成果を述べる。最初のステップとして、低エネルギーミューオン源が適当である事が判明した。このとき位相回転用加速器として、FFAG(Fixed Field Alternating Gradient)が最も得策であると結論した。主たるビームの設計仕様は、(1)強度=10^12μ/sec、(2)平均エネルギー(E)=20MeV、(3)分散(ΔE/E)<5%、(4)パルス繰り返し=1000Hz等である。この強度は現存するミューオン源の1万倍以上である。次に物理の側面からの検討結果を記す。このビームの特徴を最大限に生かす実験はμ→e変換実験である。このモードは素粒子の標準理論により完全に禁止されているが、「SUSY-GUT」模型等ではこのモードの存在が予言されている。従って、もしこのモードの存在を確認すれば新しい素粒子像を築く上で画期的である。これ以外にもμ→eγやμ→eee等のモードも有力である。またμの寿命測定によりフェルミ結合定数が決定できるが、このビームを使う事により測定精度を大幅に改良する事が出来、標準模型の検証に役立つものと考えられる。その他、物性物理や生命科学においてもこのビームを用い大きな飛躍が期待できるであろう。これらの成果は国際ワークショップ(High Intensity Muon Source 1999)で発表された。また独自の成果報告も出版する。
すべて その他
すべて 文献書誌 (1件)