研究課題/領域番号 |
11CE2004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 正樹 東京大学, 宇宙線研究所, 助教授 (80210136)
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研究分担者 |
谷森 達 京都大学, 理学研究科, 教授 (10179856)
榎本 良治 東京大学, 宇宙線研究所, 助教授 (80183755)
木舟 正 信州大学, 工学部, 教授 (40011621)
西嶋 恭司 東海大学, 理学部, 教授 (40202238)
柳田 昭平 茨城大学, 理学部, 教授 (40013429)
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キーワード | 宇宙の高エネルギー現象 / 高エネルギーガンマ線物理学 / 宇宙線の起源 / 超新星 / パルサー / 活動銀河 / 空気チェレンコフ望遠鏡 / ガンマ線望遠鏡 |
研究概要 |
1.10m口径望遠鏡1号機による観測とデータ解析の実施 平成11年度に建設・設置した10m口径の望遠鏡を用い、超新星残骸、パルサー星雲、活動銀河核などのガンマ線候補天体の観測を行った。以前の3.8m口径望遠鏡で観測されたガンマ線天体の観測を行い、パルサー星雲PSR1706-44や超新星残骸SN1006などの天体についてガンマ線信号を再確認し、従来までの約1000GeVより低い400GeV程度のエネルギーまでのガンマ線が検出できることが示され、以前より広いエネルギー領域にわたってガンマ線のエネルギースペクトルを決定することができるようになった。さらに観測を続けてデータを集積することにより、精密なスペクトルが得られ、ガンマ線放射・生成の機構の解明につながることが期待される。 今年度の主な成果を挙げる。星の生成が天の川銀河に比べ活発な渦巻銀河NGC253を観測し、TeVガンマ線の信号を得た。この天体は今までTeV領域で見つかったことのない新しいタイプのガンマ線源として注目されることとなり、NASAのニュースリリースや国立天文台のニュースで紹介された。観測結果はガンマ線放射領域が点状でなく有限な広がりを持つことを示唆しており、通常予想される放射機構では説明が困難であり、新たな解釈を必要とする可能性においても興味が持たれている。また、北天にある活動銀河核Mrk421をフレア現象が見られた2001年に約70度の大天頂角で観測し、予想以上に高いエネルギーのガンマ線の放射の証拠を得た結果を論文として発表した。これは従来銀河間赤外線放射による吸収のため検出されにくいとされた予想を覆す興味深い結果である。また、パルサー星雲PSR1706-44の結果については学位論文としてまとめられた。 その他、活動銀河Mrk421、EXO 055625-3838.6、超新星残骸RCW86、パルサーPSR 1509-58、PSR 0833-45およびPSRJ1420-6048、ジェット天体SS433、我々の銀河中心、小マゼラン雲、EGRET未同定天体3EG J1234-1318などの観測を行い、結果を解析中である。 2.10m望遠鏡2号機の調整とステレオ観測の開始 平成13年度にオーストラリア・ウーメラに設置した10m望遠鏡2号機の小型反射鏡からなる複合鏡の光軸調整を行い、また光電子増倍管カメラと電子回路の調整を行って、10m望遠鏡2台によるチェレンコフ光のステレオ観測を実現した。これは南半球では世界ではじめての観測となる。平成14年12月から本格的に観測を開始し、活動銀河EXO 055625-3838.6、超新星残骸RX J0852.0-4622、RCW86をステレオモードで観測した。結果は現在解析中である。 3.10m望遠鏡3号機の設置および4号機の製造 平成13年度に製造した10m望遠鏡3号機を1号機、2号機から約100m離れた場所に設置した。1号機、2号機の経験を元に反射鏡・電子回路・トリガー回路などにはさらに改良が加えられている。この望遠鏡は電子回路の調整を行った後観測に供される予定であり、3台の望遠鏡によるステレオ観測が開始される。さらに今年度は4号機の製造を行った。仕様は3号機とほぼ同様であり、平成15年度に現地に設置され、10m望遠鏡4台を一辺約100mのひし形の頂点に配置した望遠鏡アレイが完成する。 4.成果の公表 平成14年9月に国際シンポジウム「Universe Viewed in Gamma-rays」を千葉県柏市で開催した。参加者は国外から38名、国内から74名であり、90編の口頭およびポスター講演が行われた。このうち、本特別研究に関連する講演は16編に上った。また、同種のガンマ線望遠鏡を運用・建設しているグループからも多数の参加があり、交流を深めるとともに、国際協力の体制作りにも役立った。このシンポジウムの成果は約600ページの書籍として刊行される。また、進行状況・予備的成果については日本物理学会・天文学会および他の国際集会で発表し、また次項のように学術論文による成果の公表(発表済み4編、印刷中2編)を行なった。 5.国際共同研究の推進 アデレード大学との国際共同研究は、旧3.8m望遠鏡の設置からは13年目、(旧)科学研究費COE拠点形成「宇宙の高エネルギー断面」として振望遠鏡の建設が始まってからは4年目に入り、10m口径望遠鏡による観測は共同で行われている。オーストラリア側も、2002年度はアデレード大学・オーストラリア国立大学・シドニー大学の協力による研究基盤予算が認められ、2・3・4号機すべての設置に必要な基盤整備が行われた。
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