研究課題/領域番号 |
11F01013
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
落合 一泰 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授
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研究分担者 |
WINCHESTER MarkJohn 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | 時間と空間 / アイヌ / グローバリゼーション / 近代性 |
研究概要 |
平成23年度は、現代日本におけるアイヌの現状を考えるにあたって、グローバリゼーションの下での時間と空間の新しい経験のあり方がいかなる影響を及ぼし、またその現状がグローバルな事象として取り上げた場合、それがいかなる認識論的な転回を要するものなのかについて、その理論的および方法論的な基盤を構築していく予定であった。 これにあたって研究分担者は、文献資料からの情報収集を行い、19世紀の蝦夷地の内国化から1970年代半ば頃という、いわゆる「ポスト戦後社会」の転換期までの長期的な歴史のスパンにおいて、「近代」の意味やそれに対抗する思想動向に対して、特にアイヌの知識人がいかに異議申し立てながら貢献してきたことを観察することから得られる知見を、人文学ともに社会科学の課題として提示した。今年度11月に、研究分担者は英語の学術ジャーナル「Japan Forum」(Routledge)に1970年代に活躍していたアイヌの知識人の佐々木昌雄(1943-)を取り上げた一万二千ワード程度の長編論文を書き、提出した。同論文は現在査読中である。 なお、研究実地計画通り、日本という場からグローバルな課題を発見し、それを世界に発信するという本研究の目的に従い、研究分担者は、今年度10月にマニラ市のアテネオ・デ・マニラ大学開催の「Rethinking Borders,Mobilities and Place:Cases from Japan」というシンポジウムに参加し、本研究の意義を伝えた「Indigeneity in Motion:Ainu and Migrants in the Formation of Colonial 'Hokkaido'」という報告を行なった。また、3月には、モントリオール市にあるマギル大学東アジア研究所のマーク・ラマール教授に招待され、研究分担者は先ほどの研究論文の報告を「The 44^<th> Japan Seminar of Montreal」として行なった。同じ3月15日~18日のアメリカ・アジア学会(AAS、トロント市開催)にて、研究分担者は海外の研究者と同テーマ関連のパネルを組み(パネル番号181)、本研究の理論的基盤構築の成果を発表し、本研究を海外の研究状況と結びつけてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の理論的および方法論的な基盤を構築していくという目的に関して、研究分担者は国際学術ジャーナルに長編の研究論文(現在査読中)の提出が出来、さらにその成果を海外の研究状況と結びつけていくという意味でいくつかの海外の研究大会やシンポジウムにも参加が出来たという意味で、本研究の達成度は順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の推進に関して、今後は研究の焦点を一層に拡大し、アイヌ以外の周縁化された人々や地域を対象とし、グローバリゼーション下でそうした周縁の生産がいかに変貌してきたのかを分析していく。なお、研究分担者は、グローバリゼーションの下での時間と周縁の生産に関するこうした新たな視点を総体的なフレームワークにおいて統合し、研究成果を英語と日本語ともに発表していく予定である。
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