研究課題
重い電子系の量子臨界点近傍における非従来型の超伝導や非フェルミ液体といった振る舞いが、近年大きな注目を集めている。我々が発見したYb系初の重い電子超伝導体・-YbAlB4は、その常伝導状態において顕著な非フェルミ液体性を示すが、さらに磁化の精密測定により発見されたT/Bスケーリングから、金属では初めて、常圧、ゼロ磁場でチューニングのいらない非従来型の量子臨界点が実現していることが分かってきている。この系に現れる新しい量子臨界現象の解明を目指して、我々がEoin O'Farrell氏を中心として行った活動は以下のようになる。β-YbAlB4の単結晶育成:まず、様々な物性測定のために純良単結晶の育成を行った。これらの単結晶は共同研究としては、熱伝導度測定(東京工業大学)、メスバウアー分光測定(兵庫県立大学)と、結晶場決定のためのX線吸収分光測定(Koln大学との共同研究)に用いられた。これらは量子臨界点の性質を決定するために本質的重要な測定である。β-YbAlB4のホール効果:準備した純良単結晶を用いて、2Kから300Kの温度領域においてホール効果を測定し、詳細な解析を行った。また、予備的な結果であるが、1K以下で量子臨界点近傍の測定も行った。高温での結果は電子構造が変化していること示唆し、電子構造の定量的な情報を得ることができる。先行研究であるESRおよび硬X線光電子分光を用いたYb価数測定は、この温度領域で異常な振る舞いがあることを示唆していたが、この実験はこれについて更なる知見を与えた。β-YbAlB4の圧力下測定:圧力下で電気抵抗率測定を行い、この物質が圧力下で通常とは異なる振る舞いを示すことを明らかにした。また、圧力下でのホール伝導度測定を行うことにより、この系の圧力下磁場効果を明らかにした。磁気秩序に近い2.4GPaまでの圧力下測定については、既に測定が進んでいる。これらの測定は量子臨界点の発現機構を明らかにするために重要である。
2: おおむね順調に進展している
当初予定通り、純良単結晶の育成を達成したと同時に、翌年度の計画であった圧力下の物性測定を計画を一年早めて測定を実施することができた。一方、比熱測定は、測定装置の開発が終わったところで、一年が経ち来年度の予定に修正となった。以上を持って、当初計画どおりに概ね、進展していると言える。
量子臨界物質であるβ-YbAlB4の臨界現象の発現機構の解明には、同組成で多形体α-YbAlB4の物性の解明、得に圧力下での量子臨界現象の追究が必須である。来年度は、本年度行った圧力下での輸送特性の測定をα-YbAlB4に対しても実施する。また、比熱等の熱力学量の測定も実施する。
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