研究概要 |
本研究では、アフリカで頻繁に起こっている森林火災、農業廃棄物の燃焼、また、日常生活(料理など)で使用されるバイオ燃料の燃焼の大気エアロゾルへの影響を評価するために、セルロースの燃焼により生成する脱水糖の一種であるレボグルコサンの測定を行った。' アフリカの東部に位置するタンザニアにおいて採取した大気エアロゾル試料を、有機溶媒で抽出した後、BSTFA試薬で水酸基を誘導体化し、GC/MSで糖類を測定した。その結果、試料中にバイオマス燃焼のトレーサーであるレボグルコサンを検出し、その濃度を決定することに成功した。また、エアロゾル試料を水抽出後、イオンクロマトグラフィーで分析し、カリウムを含み無機イオンを測定した。K+は、植物中に多く含まれ燃焼によって大気中に放出され、大気エアロゾル粒子に取り込まれる。本研究で、レボグルコサンはより微細なエアロゾル画分(PM2.5)に濃集していること、その濃度は、雨期に低い値(38-307ng m-3,平均146ng m-3)を、乾期に高い値(138-408 ngm-3,平均252ng m-3)を示すことが明らかとなった。また、レボグルコサンの濃度は、バイオマス燃焼の無機トレーサーであるK+と強い正の相関を示した。 本研究の結果、タンザニアでは、バイオマス燃焼やバイオ燃料の燃焼が大気質を大きく変えていることが明らかとなった。また、雨期には降水による除去の結果、エアロゾル濃度は低くなることがわかった。更に、レボグルコサン濃度は、エアロゾル中の水溶性有機炭素(WSOC)濃度と良い相関を示し、バイオマス燃焼が雲凝結核として作用するWSOCの重要なソースであることを示唆した。また、同位体比質量分析計を用いて、エアロゾル中の炭素・窒素の安定同位体比を測定し、エアロゾルの起源を議論した。更に、低分子ジカルボン酸の組成を解析し、シュウ酸が最も濃度の高い成分であることを明らかにした。シュウ酸などジカルボン酸の安定炭素同位体比をGC/IRMSを用いて個別に測定し、大気中での光化学的酸化プロセススを議論した。
|