研究課題/領域番号 |
11F01041
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
真嶋 哲朗 大阪大学, 産業科学研究所, 教授
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研究分担者 |
BIAN Zhenfeng 大阪大学, 産業科学研究所, 外国人特別研究員
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キーワード | 二酸化チタン / 光触媒 / 電荷移動 / 単一分子蛍光分光法 |
研究概要 |
TiO_2ナノ粒子に代表される金属酸化物半導体ナノ材料は、環境浄化や水分解を目的とした光触媒、太陽電池などの光電変換素子、バッテリー、センサーなど様々な応用が期待されている。しかしながら、溶液中や薄膜中のナノ粒子は無秩序な凝集体を形成しており、そのような凝集体では界面の不整合によって高効率な粒子間電荷移動は期待できず、反応表面積の低下も懸念されている。そこで、本研究では、TiO_2光触媒反応における粒子配列の影響を調べるため、ナノ粒子が結晶学的に規則正しく配列したTiO_2メソ結晶を開発した。TiO_2メソ結晶の光触媒活性を評価するため、365nm光照射による有機分子(P-クロロフェノールおよびローダミンB)の分解率を求めた。その結果、メソ結晶は同程度の表面積を持つ無秩序に凝集したナノ粒子と比べ、非常に高い光触媒活性を示すことがわかった。また、時間分解拡散反射測定から、メソ結晶中に生成した電荷分離状態が、ナノ粒子凝集系と比べ、長寿命であることが明らかになった。さらに、コンダクティブ原子間力顕微鏡測定から、メソ結晶において非常に高い光伝導性が確認された。以上の結果は、メソ結晶中では粒子間電荷移動が高効率に起こることを示唆している。 また、単一分子蛍光分光法を用いて、酸化ニッケルナノ粒子薄膜上に吸着したペリレンジイミド色素の光誘起電荷移動反応を観測し、太陽電池の光エネルギー変換過程における分子間相互作用の寄与を明らかにした。単一分子蛍光強度、寿命、ブリンキング、異方性の相関解析から反応性の分布や時間揺らぎが吸着サイトに特有な分子間相互作用や反応ダイナミクスと密接に関係していることを見出した。また、絶縁体であるアルミナ層が反応過程に及ぼす影響を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでにない新規なTiO_2メソ結晶の合成に成功し、特許を出願することができた。また、TiO_2メソ結晶に関して行った研究を学術誌に投稿中である。TiO_2メソ結晶は、光触媒への応用など、大きな可能性を秘めた材料であり、今後更なる研究展開が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
TiO_2メソ結晶に関する研究を引き続き推進することで、本研究の目標であるTiO_2光触媒の高効率化が達成できるとともに、粒子間電荷移動のメカニズムなど、基礎的にも非常に重要な知見を得ることができると確信する。
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