研究課題/領域番号 |
11F01053
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
藤井 透 同志社大学, 理工学部, 教授
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研究分担者 |
GABR M.H. 同志社大学, 理工学部, 外国人特別研究員
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キーワード | MFC / 耐水性 / CFRP / 破壊じん性値 / ゴム粒子 / ナノクレイ / ハイブリッド変性 / 耐久性 |
研究概要 |
実用的には、MFCは主に針葉樹化学パルプを摩砕して製造される。その成分はセルロースのため、極めて親水性が強い。また、紫外線(UV)にも弱い。したがって、これをCF/Epoxy複合材料の母材の改質に使った場合、MFCが吸水する/暴露されることにより、CFRPの耐久性が低下する恐れがある。そこで、初めに天然繊維を使ったPMCの耐水性を明らかにした。その結果、いわゆるグリーン複合材料の場合、吸湿/UVによる強度が劣化することを明らかにした。本年度は、MFC変性したCFRPの耐久性に及ぼす吸湿/UVの影響を明らかにする試験の準備は整えた。 エポキシ母材にMFCを少量添加するだけで、これを用いたCFRPの耐久性は飛躍的に増す。しかし、破壊靭性値、特に層間剥離を伴うフラットワイズ方向の衝撃強度は顕著に向上しなかった。そこで、高い耐久性を維持しつつ耐衝撃性能も高めるため、微細ゴム粒子によるハイブリッド変性を試みた。その結果、層間剥離に対する破壊じん性値は、MFC単独の変性に比べて、さらに約60%向上させることができた。 微小ゴム粒子以外に、MFCとナノクレイのハイブリッド変性についても、その効果を確かめるため、エポキシ母材中で両者を均一に分散させる方法を調べ、超音波により均一分散する方法を見出した。 『エポキシ変性に及ぼすMFCの原材料および解繊の影響』を明らかにするため、MFCのみならず、エレクトロスピニング法によりPVAナノファイバーを製造し、これをエポキシ母材に分散させ、CFRPのじん性向上効果およびの耐久性向上の効果を明らかにした。また、MFCの解繊度とじん性向上の関係を調べ、これらにより母材を改変したCF/EP積層板の静的強度を調べた。その結果、ナノ繊維の混入量が1%未満とわずかにも拘らず、これらナノ繊維により母材の破壊じん性値が優位に向上することが分かった。静的強度も秘程度の向上が認められた。一方、耐久性に関しては、これらナノ繊維の混入により高サイクル疲労寿命域で極めて顕著な寿命の向上が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バクテリアセルロースによるエポキシ母材の変性は、基本的にMFCと変わるところがなく、その形態がCFRPの耐久性に大きな影響を与えないと考えられるに至った。そこで、MFCの代わりに剛性が小さいPVAナノ繊維を入れても疲労寿命の向上が認められるため、MFCナノ繊維によるCFRPの耐久性向上メカニズムの解明のヒントを得られたと考えている。この発見をメカニズム解明の基礎として、理論的構築を進めている。耐久性のみならず、衝撃特性も向上させることを狙って、エポキシ母材を微小ゴム粒子とMFCにより同時に変性するハイブリッド変性について調べたが、破壊じん性値について、顕著な向上が得られた。これらの成果は順調に得られている。なお、共同研究者の出国が困難だったため(エジプト革命)、本学への着任時期が3か月遅れた。そのため、ハイブリッド変性の耐久性に及ぼす効果の検証試験の開始が若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究は概ね順調に進んだが、11項で述べたように、耐久性=疲労試験は年度末に開始した段階である。PMCの高サイクル疲労では、100万回が目安であるが、MFC変性はより多い繰り返し数で一層その効果が顕著となる。そこで、24年度は、高サイクル寿命でのMFCナノ繊維によるCFRPの耐久性向上の確認と、そのメカニズム解明を進める。前年度、MFCに比べ、一桁小さいヤング率のPVAナノ繊維による耐久性向上効果を見出したので、それらの効果が(1)樹脂の疲労き裂抵抗の向上、か(2)樹脂-繊維界面の接着性の向上⇒剥離き裂成長に対する抵抗性の向上によりもたらされたのか、を中心に明らかにする。加えて、カーボンナノチューブといった、MFCより高剛性のナノ繊維での母材変性効果も確かめ、疲労特性向上のメカニズムのモデルを構築する。
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