研究課題/領域番号 |
11F01053
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
藤井 透 同志社大学, 理工学部, 教授
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研究分担者 |
GABR M.H. 同志社大学, 理工学部, 外国人特別研究員
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キーワード | MFC / 耐水性 / CFRP / 破壊じん性値 / ゴム粒子 / ナノクレイ / ハイブリッド変性 / 耐久性 |
研究概要 |
平成23年度の研究は概ね順調に進んだが、耐久性=疲労試験は年度末に開始することとなった。PMCの高サイクル疲労では、100万回が目安であるが、MFC変性は、より多い繰り返し数で一層その効果が顕著となる。そこで24年度は、高サイクル疲労寿命域でのMFCナノ繊維による平織カーボン繊維(CF)/エポキシ母材複合材料(CFRP)の耐久性向上の確認と、そのメカニズム解明を進めた。前年度、MFCに比べ、ヤング率が母材のエポキシ樹脂より小さいと考えられるPVAナノ繊維をエレクトロスピニング法により作成、これによる耐久性向上効果を見出した。この時、静的強度も顕著に増したが、ヤング率がアラミド繊維並みと考えられるMFCの場合には、PVAナノ繊維ほどには静的強度を増すことはなかった。これらのことからPVAナノ繊維の剛性は、バルク材のそれよりかなり高いと推定した。加えて、強化材に織り構造を有する平織CF布を用いているため、剛性の高いナノファイバーの応力緩和効果が寄与しているとみられる。そこで、ナノ繊維よる母材の物理的変性効果を明らかにするため、直径500nmのガラス繊維(GF)を用い、MFCやPVAナノ繊維と同じようにエポキシ母材に混入、分散させCFRPの耐久性の向上を調べた。また、モデル実験として直径が10μm程度(長さ1mm)のガラス繊維も用い、平織CFRPの層間き裂進展特性を調べた。その結果、繊維を混入しない場合に比べ、いずれの繊維でも平織CFRPの層間の疲労き裂進展速度が抑えられることが分かった。しかし、φ10μmのガラス繊維を混入した場合に比べ、繊維径が直径500nmのガラス繊維の方がき裂成長速度が遅くなることが分かった。これより、サブミクロン繊維を含め、ナノ繊維は繊維束の間のエポキシ母材中にも入り、CFの傍に繊維が存在する場合、疲労き裂がナノ繊維を迂回するように作用することによってき裂の進展が遅らされるとのモデルを構築できた。 後半は、発想を変えて、MFCを母材とし、ナノクレイをこのMFC母材中に分散させたグリーン複合材料を開発するとともに、その可能性について調べた。その結果、これらの組み合わせにより、特性の優れたグリーン複合材料が作れることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
特別研究員:Mohamed H.GAER氏の弛まない努力と、実験を繰り返すことへの躊躇が無く、一度実験が思い通りにいかなくとも、創意と工夫で問題点を克服し、新たな材料開発と特性を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を基に、ナノフィラー、ナノ繊維であっても新たなハイブリッド効果、新たな機能が付与できることが明らかにできた。今後は、ナノ・ハイブリッド効果を具体的なアプリケーションに展開する。また、マクロな複合材料(ミクロンレベルの寸法の繊維と母材樹脂)とナノコンポジット(ナノファイバーと母材樹脂)の階層的構造の意義を、明確なモデルで晃かにすべきと考えている。
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