研究概要 |
ZnWO_4の光触媒特性を向上させるため,0~30mol%の範囲で種々割合Bi_2WO_6を加えた階層的なヘテロ組織を有する複合材を構造指向剤を用いることなく-段階水熱法で作製した.作製した複合材は,XRDとRaman分光で構成相のキャラクタリゼーションを行い,SEMとTEMで組織観察した.また,UV-visスペクトルも測定した.その結果,XRDとRaman分光でZnWO_4とBi_2WO_6の生成が同定され,Bi_2WO_6量の増加とともにその生成量が増加することも確認できた.SEMとTEM観察からは,球状のZnWO_4表面に米粒形状のBi_2WO_6ナノ粒子が自己集積している組織を取ることが分かった.UV-visスペクトルでは,Bi_2WO_6の増加とともに吸収端が355nmから450nmまで連続的にシフトすることが明らかとなった.光触媒特性はバッチ式の反応容器を用いてUV照射下でのアセトアルデヒドの分解挙動から評価した.その結果,ZnWO_4/Bi_2WO_6複合材は,それぞれの単身試料及びそれらの機械的混合試料よりも明らかに高い分解能を示した.この特性向上には,複合化により電荷分離特性が向上し,また,その再結合確率を低下できたためと考えられた. Aurivillius族の中で最もシンプルなBi_2WO_6は2.84eVのバンドギャップを有するη型半導体である.これに可視光応答能のあるp型半導体であるBiOIとCeVO_4を組み合わせ,p-nヘテロ接合を有する複合光触媒を作製した,この構成により形成される内部電場により,光励起された電子-正孔対は効果的に電荷分離できるものと期待できる.この他,光触媒反応を効率的に進行させるためには吸着特性を持つ材料との共存も有用と考えられるので,それらの特性が優れた天然素材であるallophaneをBi_2WO_6,BiOIまたはCeVO_4とin-situに水熱合成して,Bi_2WO_6/BiOI,Bi_2WO_6/BiOI/allophane,Bi_2WO_6/CeVO_4,Bi_2WO_6/CeVO_4/allophaneなどの複合材を作製した.XRDでは,目的とする結晶相とallophaneによるハロー図形が確認されている.今後,SEM,TEM,UV-visスペクトル測定,及び比表面積や光電圧測定などでの評価を予定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた複合材の作製が達成でき,ZnWO_4/Bi_2WO_6の複合材については想定通りに光触媒特性を向上させることができた.また,p-nヘテロ接合を有する複合光触媒についてもBi_2WO_4BiOI,Bi_2WO_4BiOI/allophane,Bi_2WO_6/CeVO_4,Bi_2WO_6/CeVO_4/allophaneなどの組み合わせの複合材を作製することができた.
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今後の研究の推進方策 |
予定通りに研究が進められているので,今後も下記の項目について検討を行う. ・Bi_2WO_6/BiOIとBi_2WO_6/BiOI/allophane複合材の可視光照射下でのアセトアルデヒドの分解特性. ・Bi_2WO_6/CeVO_4,Bi_2WO_6/CeVO_4/allophane複合材の可視光照射下でのアセトアルデヒドの分解特性・上記複合材の作製と光触媒特性に関する成果をまとめた論文の作成と国際的な学術雑誌への投稿. ・上記複合材の作製と光触媒特性に関する成果の国際会議での発表. ・その他の新規複合材としてBi_2WO_6/Fe_3O_4,Bi_2WO_6/Ag_2Oの作製に対する検討。
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