研究概要 |
太陽光を利用できる光触媒機能材料として,狭いバンドギャップを有するAurivillius相をキー物質とし,これに種々の半導体化合物並びに吸着機能材料を複合化・接合化した材料について検討している。 Aurivillius相のBi_2WO_6と複合化する半導体化合物としてCa_<10>V_6O_<25>を選択し,その合成を試みた。その結果,合成温度120~180℃,合成時間12~48h,pH≧12.5の範囲で単相が得られた。目的物の形態はこれらの合成条件により大きく変化し,サブミクロンサイズで大きさが比較的均一な球状粒子は180℃,48h,pH=12.5の条件下でのみ合成できることが分かった。UV-vis拡散反射スペクトルでは,その吸収端は380nmに見られた。また,VSMにより磁気特性を調べたところ,超常磁性を示すことが分かった。今後,このCa_<10>V_6O_<25>を第2相としたCa_<10>V_6O_<25>/Bi_2WO_6複合体を合成し,その光触媒特性について調査する予定である。 半導体のp-n接合による可視光応答型光触媒能材料として,p型のBiOIとCeVO_4,n型のBi_2WO_6を用いた複合体に,分解対象物の吸着機能を有するアロフェン(1-2SiO_2Al_2O_3nH_2O)を第3相として付加した複合体BiOI/Bi_2WO_6,アロフェン/BiOI/Bi_2WO_6,CeVO_4/Bi_2WO_6,アロフェン/CeVO_4/Bi_2WO_6を,180℃で12h水熱処理して,合成した。その結果,UV-visスペクトルで吸収端の可視光領域へのシフトを確認した。また,アロフェンを第3相に加えると,明らかに比表面積が拡大した。これらの複合体の光触媒能を可視光照射下でのアセトアルデヒドの気相分解挙動から調査した結果,p型半導体相とアロフェンの存在割合を増やすと特性が向上した。これにより,本研究テーマを設定した際の仮説が正しいことを明らかにできた。今後,新たな系としてグラフェンを用いた複合体系についても検討し,あわせて,光電流特性,電気化学インピーダンススペクトル測定などを通して,これらの複合体で光触媒能が向上する機構を詳しく検討する。
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今後の研究の推進方策 |
予定通りに研究が進捗しているので開発した種々の複合体に対して,新たにグラフェン系複合体も含めて検討する。その上で,残ったおもな課題である,可視光照射下でこれらの複合体の光触媒能が向上する機構を明らかにして行く。 既にZnWO_4/Bi_2WO_6,Ca_<10>V_6O_25,については成果を論文としてまとめ,発表しているが,この他のBi_2WO_6/アロフェン,BiOI/アロフェン,Bi_2WO_6/BiOI,Bi_2WO_6アロフェン/BiOIなどの複合体についても成果を論文発表する予定である。
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